仕事のやりがいとは何か?(TED)

 

自分の仕事にやりがいを感じているでしょうか。

そもそも やりがいとは何でしょう。働いた分だけお金をもらうこと、自分の成果物が評価されること、楽しく仕事をすること。人によって定義は様々でしょう。

本記事では、行動経済学者 ダン・アリエリーによる「仕事のやりがいとは何か?」をご紹介します。

概要

給料が上がるとやる気も向上する。多くの方がそう考えるでしょう。

では何故 人は登山を行うのでしょうか。登山の大部分は苦痛に満ちたもので、喜びと言えば登頂した瞬間のみです。しかし下山してしばらくすると、また登山家は山に登ります。

頂上に登っていく過程も、同じように大切だということがわかります。


このような実験を行われました。

1.報酬を与え タスクを実施してもらう⇨2.報酬を徐々に下げながら、同じタスクを実施してもらう。

グループA:得られた完成品に自分の名前を記載してもらい、タスク終了後 記載された名前と内容を確認する
グループB:名前は記載させず、完成品の内容も確認しない
グループC:完成品を目の前でシュレッダーにかける

どのグループが 安い報酬でもタスクを継続して実施できるでしょうか。

結果は、グループAが安い報酬でもタスクを継続し、グループCは早々に継続をやめました。自分の成果物が無為になることと、モチベーションに相関があることを示しています。

ではグループBはどうでしょう。グループAと同じ程度まで安値で継続する?Cと同じく早々にやめる?AとCの中間?

結果はグループBは、Cと同程度で継続をやめたそうです。つまり 自分の成果物が確認もせず無視された状況となったとき、人のモチベーションは大きく削がれてしまうことを示しています。

逆に言えば、「名前と内容をサッと確認する」これだけでモチベーションは継続するのです。モチベーションを高くすることは難しくないけれども、砕くこともまた簡単です


イケアの家具。組み立ては非常に大変ですが、作成されたものに対して製作者は愛着を持つそうです。
ケーキミックス。材料からわざと卵と牛乳を抜いて、製作者に準備させる。これだけで作られたケーキは「自分のケーキ」だと認識するようです。

このような「イケア効果」の検証も行われました。

グループA:作り方を記載した紙を渡して折り紙を作ってもらい、自分の折り紙を いくらだと購入するか
グループB:グループAで作られた折り紙に対して、いくらだと購入するか

グループAのほうが、Bより5倍も高い値をつけたそうです。ここで重要なのが、グループAの人たちは、作製者である自分以外も 同等の値をつける、と考えた点です。つまり自分の制作物を より気に入ってしまうのです。

検証のために、折り紙の作り方の記載を わざと不十分にし、より「苦労」するようにしました。そうすると、グループAの買値は さらに上昇しました。もちろん作製された折り紙はより不格好になるため、Bの購入価格はさらに安くなりました。


大量生産の効率化された物づくりでは、生産性の向上のために、多くの制作過程は分業化されています。

しかし現代の知識経済において、効率性は意義より大切なのかとダン・アリエリーは述べます。

モチベーションは給与だけでなく、意義・創造・チャレンジ・所有権・アイデンティティ・誇り など 様々なものを付随して考えられるべき、として講演をまとめられています。

 

モチベーションと現代の労働状況

日本においても 終身雇用性は崩れ、能力の高い人を優遇する欧米スタイルに移行しつつあります。

そのような状況下で優秀な人材を集めるためには、給与を上げることがもっとも効果的でしょう。ファーウェイの初任給が40万円(日本経済新聞)や、一昔前 MITの卒業生が軒並み 高給与のウォール街に就職したことが話題となりました。

しかし より高待遇で高給与の条件が提示されたとき、彼らはすぐに転職に応じるでしょう。会社として これらの人材を確保しておくためには、給与だけでなく、モチベーションを維持させる仕組みを作ることも重要かもしれません。


若い世代は失敗を恐れる、とよく言われます。失敗しないことにだけ注力する仕事では、やりがいを感じられません。失敗に寛容な風土や、若い世代に積極的にチャレンジさせることが大切でしょう。

人材不足が叫ばれる中で会社を維持していくためには、世代の特性に応じた組織に絶えず変化していくことが求められます。

 

「イケア効果」を考える

「イケア効果」。自分の作品に愛着をもつのは当然ですが、「他の人も同じように愛着を持っている。」こう考えてしまうのは危ないです。

なぜ自分の音楽が評価されないのか。なぜ私たちのゲームはDLされないのか。

ともすれば、他責論に行き着いていしまう危険性を孕んでいます。自分の作品を客観的に評価する視点をもつことも、クリエイターには重要な要素ですね。


苦労した分だけ、より気に入ってしまうことも「イケア効果」です。

苦労して作ったのに評価されないのはおかしい、ではなく、苦労して作ったのに評価されなかったのは何故だろう、と前向きに分析して今後に生かしていくことが大切です。