ライブコマースアプリ「PinQul」が2018年9月でクローズ(TechCrunch Japan)となるようです。
CEO 井手康貴氏のブログによれば、クローズの理由は事業の規模感が見えてしまったとのこと。ある程度の売上は立っており、サービスを継続することも可能だったようですが、思っていた事業規模は実現できなかったようです。
さて、今回は日本ではまだ馴染みのない「ライブコマース」について触れてみたいと思います。
目次
「ライブコマース」とは
ライブコマースとは、タレントやインフルエンサーがライブ配信で商品を宣伝し、視聴したユーザーが商品を購入できる仕組みです。テレビショッピングみたいなものですね。ライブ配信ならではの双方向やり取りが、これまでのECサービスとは異なっています。
海外、特に中国ではすでに盛況なサービスとなっています。
ライブ配信と「投げ銭」文化
創作物に対して報酬を送る行為は、ネットでも活発に行われていますね。古くは同人作品の委託販売から、最近ではnoteなど で個人が気軽に商品を有償販売できるようになりました。
特にライブ配信者への報酬は「投げ銭」と呼ばれます。ストリートパフォーマーに対して小銭をあげる行為から名付けられたようです。イチナナライブ,Twitch,YouTube Liveが投げ銭をできるライブ配信として有名でしょうか。
お金を払いたい欲求 と オススメされたものを買いたい欲求
ライブ配信者への「投げ銭」が、他のプロダクト販売と異なる点は、自分の投げ銭への反応がリアルタイムで配信者から発信されることです。クリエイターへの謝礼と共に、自身の承認欲求が同時に満たされるため、中には信じられない大金をポンと払う方もいるようです。
(個人的な見解ですが、ライブ配信では 視聴者は安全圏からサービスを視聴できることに特徴があるのだと思います。「応援してあげたい」というより「応援してやろう」という心理?)
ネットで商品を購入するとき、Amazonのレビューや「〇〇のおすすめ10選!」といった記事を参照することも多いのではないでしょうか。最近 消費欲求が低くなったと言われますが、本当に良いもの(と感じたもの)には財布のヒモが緩んでしまいます。
よく考えると、これらのレビューは どこの誰が書いたものなんてわかりません。自分と全く感性が合わない人のおすすめ製品かもしれません。しかし、レビュアーが匿名だからこそ「この製品に詳しい専門家の意見」に感じられます。
それでは「ライブコマース」は
ライブコマースも、オススメされたいものを買いたい欲求を刺激するサービスではあります。しかし、そこに「顔出し」というオプションが付くことで、良くも悪くも配信者が商品販売に影響します。
まったく興味がない製品でも、配信者を応援しようという意図を持って製品を購入する方もいるでしょう。一種の「投げ銭」ですね。
ただ一度 紹介者に対して悪い印象を持てば、商品を購入したい意欲はなくなるでしょう。
匿名というマスクがないことで、配信者の人気・技量が売上に直結するため「物を売る」ハードルは比較的高いのではないでしょうか。
ライブコマースで売れる製品は
こちらの記事によると、ライブコマースで購入される商品は、衣服・アクセサリーの割合が高いようです。
これらは絶対的な基準(良い / 悪い)を、自分の中で確立しにくい製品ですので、他者からのオススメで購買意欲に繋がることは理解できます。双方向やり取りという特徴を生かして、サイズ感などを 配信者に直接確認できることもメリットですね。
ある程度ブランドが認知された製品は、個人が広告宣伝しなくても売れますし、広告効果はあまり期待できないでしょう。
どちらかと言えば、新ブランド・新製品の初期購入促進への使用が効果的ではないでしょうか。
ライブコマースは浸透するか
広告がますますパーソナライズ化されることを考えると、長期的には難しい気がします。
しかし「配信者との繋がり」ニーズと合致すれば、大きな効果が見込めるのではないでしょうか。
配信者の影響度と、配信者のファンが購入したい製品 をきちんと見極めた上での導入が良いでしょう。