【2018 M-1グランプリ】M-1審査点を分析

 

霜降り明星』さん、2018年 M-1グランプリ優勝おめでとうございます!!

今回は、決勝審査員7名の得点を分析してみました。

M-1審査員と審査点

M-1 2018審査員は以下の7名でした(敬称略)。

上沼恵美子松本人志(ダウンタウン),富澤たけし(サンドウィッチマン),立川志らく塙宣之(ナイツ),中川礼二(中川家),オール巨人(オール阪神・巨人)

例年の批判を受け、関東・関西からほぼ均等となるよう選出されたようです。

 

さて、各審査員の審査点は以下のようになりました。赤字,青字はそれぞれのコンビの最高点,最低点となります。

 

審査点を分析

いくつかの観点から得点を眺めてみます。

発表順と得点推移

観戦記事や出場された方のインタビュー記事を見ると、前半の雰囲気が重かったとされています。実際 全ての審査員の得点トレンドラインは、発表順に右肩上がりに上昇しています。もちろん実力差はあるでしょうが、前半不利は確かに存在するかもしれません。

後述の分析でも触れますが、志らくさん,上沼さんは得点の上下変動が大きいです。

 

基本統計量

はじめに審査員の傾向を見てましょう。

オール巨人さん…最高,最低点を付けることは少なく、比較的 審査員全員の平均をとったような得点をつけています。同様に標準偏差もちょうど中間に位置しており、バランス型と言えそうです。

中川家礼二さん…全て90点超え、各コンビに対して最高点を付ける割合が多く、総得点も920点で最高です。点数のばらつき,範囲が最小なのが影響しているでしょう。語弊はあるでしょうが、もっとも”甘い”審査員と言えるかもしれません。

ナイツ塙さん…意外にも最高点と最低点の差がもっとも大きい審査員です。しかし後述の志らくさん,上沼さんと比較し、平均値と中央値の差が小さく(巨人さん,礼二さんと同値)、全ての得点帯に対して満遍なく点数を付けています。明確な得点差はありますが、点数の偏りはない審査員です。

志らくさん…最高,最低点を付ける割合が多い、上沼さんと同じく好みの差がはっきりした審査員です。面白いのが、上沼さんが高い点を付けたコンビに低い点を、低い点を付けたコンビに高い点を付けています。後述するように 両者の点数に相関はほとんどありません。そのため、点数のばらつきの大きい2人の影響は相殺されたと言えます。

サンドウィッチマン富澤さん…傾向としてはオール巨人さんに似ています。平均値と中央値の差が小さく、点数偏りがほとんどありません。バランス型で、悪い言い方をすると無難な得点を付ける審査員です。

ダウンタウン松本さん…最低点を付ける割合が大きい、”厳しい”審査員です。また上のトレンドラインを見ると、前半組から後半組にかけて得点の上昇割合がもっとも大きいです。最終審査後「番組を皆で作り上げていることに感動した」と仰っていたように、番組全体の盛り上がりが得点に影響しているのかもしれません。そういう意味では、もっとも自分を殺して観客の盛り上がりで判断しているとも言えそうです。

上沼さん…志らくさんと僅かな差ですが、平均値と中央値の差,標準偏差がもっとも大きく、明確な好み差をもつ審査員です。審査後のコメントでも自ら仰っていましたね。

 

続いてコンビの傾向を見てましょう。

比較的点数のばらつきが小さいのが、スーパーマラドーナかまいたちギャロップ和牛でした。全員の得点に差異はなく、M-1総意の評価と言えそうです。

逆に点数のばらつきが大きいのが、ジャルジャルゆにばーすミキトム・ブラウンです。審査員の好み差が明確で、視聴者から点数に不満が出やすいコンビと言えます。こればかりは好みなので、万人が納得する評価はないのかもしれません。

 

審査員間の相関

各審査員の得点相関です。

志らくさん,上沼さんを除く5名は、相関が高いです。特にダウンタウン松本さんナイツ塙さんの相関は非常に高く、両者の価値観は似ていると言えそうです。

 

逆に志らくさん上沼さんは、他との相関は低いですね。強いて言えば、上沼さんは志らくさんを除く5名とは比較的相関が高いでしょうか。また 上述したように両者の相関は無いに等しく、好み差が大きい2人の得点はうまく相殺された格好です。面白いですね!

 

順位

続いて、各審査員が付けた点数をコンビ順位として、総合順位と比較してみましょう。

最高点最低点差が小さい、オール巨人さん中川家礼二さんサンドウィッチマン富澤さんは、順位被りが多くなります。唯一 ダウンタウン松本さんは得点被りがなく、1~10位の明確な順位を付けたことになります。

総合順位3位までに入った、霜降り明星和牛ジャルジャルは全員が高順位を付けています。唯一上沼さんのジャルジャル7位が異質でしょうか。但し、ここでも志らくさんの99点に相殺されました。

 

総合順位と、各審査員が付けた順位との相関です。

ダウンタウン松本さんの順位が、総合順位ともっとも相関が高くなりました。巨人さん塙さん富澤さんも高いです。礼二さんはコンビ間 点差が少ないことが影響し、前の4名と比較すると低いですね。志らくさん,上沼さんがそれに続きます。

松本さんに対して、「好みが大きい」という批判は的外れでしょう。

 

審査員得点と総合得点

相関

各審査員の点数を審査員数の7倍し、総合得点との相関を見てみます。

点数順と同じく、巨人さん塙さん富澤さん松本さんの点数と総合得点は相関が高く、この4名の審査基準が総合得点となって現れています。

と言っても、他3名も決して低いわけではありません。7名の評価はおおよそ揃っていたと言えるでしょう。

4~6位が団子状態ですが、総合得点と順位の相関は ほぼ直線上にのっています。総合得点が突出して高い/低いコンビはありません。

 

得点分布

続いて、各人の得点と総合得点の分布を見てみましょう。







上で各審査員得点総合得点の相関が高いことからわかるように、全員が右肩上がりの分布となっています。特に松本さん塙さんは綺麗な一直線ですね。

さて基本統計量の項でも示したように、礼二さん富澤さんは最高点ー最低点差が小さく、分布からもはっきりと その傾向がわかります。ルール上は0~100点が許されていますが、各審査員によって付ける範囲はかなり異なります。

当然その差異は総合順位に反映されるため、上位を狙うなら得点範囲が大きい審査員に高得点を付けてもらう必要があります(※今大会は結果的に、高得点低得点が共通認識となっており、影響は小さいです)。

審査員間の点数範囲による影響をなくすなら、点数ではなく順位を付ける、もしくは 上位〇〇組を各審査員が選ぶ方式が良いとは思います。それなら前半不利も幾分か緩和されるでしょう。※興行的に盛り上がりが欠けるのは理解しています。

 

審査法について

得点の分析はここまでにし、仮に審査法を変えた場合 順位変動はあるのか検証してみます。

最高,最低点を除く

(擬似的に)異常値を除くために、最高点,最低点を除くとどうなるでしょうか。フィギュアスケートでも同様の手法が取られています。

※最高,最低点に被りがあった場合、片方のみ除いています。

除く前と比較すると、明確にばらつきが小さくなりました。但し順位は、元々2点差だった4,5位のかまいたちミキが逆転しただけで、全体順位に変動はほとんどありません。

 

志らくさん,上沼さんの影響

好み差がはっきりしていた志らくさん上沼さんを除くとどうなるでしょう。

最高,最低差を除いた場合と同様に、かまいたち,ミキの順位差が入れ替わっただけです。

 

続いて志らくさんだけ除きます。

ミキジャルジャルが同率3位になりました。また5位のかまいたちも3位と1点差と、3位争いが激しくなりますね。

 

最後に上沼さんだけ除きます。

ジャルジャル和牛の順位が入れ替わりました。またトム・ブラウンが4位に躍進します。

 

いずれにしても上位3組は揺るぎませんね。全員納得の決勝進出3組と言えるのではないでしょうか。

 

まとめ

2018 M-1グランプリの審査員得点を分析してみました。傾向の似た5名と、好み差が大きな2名という構図でしたが、上位3組 はほぼ万人納得の結果かと思います。

世間的に志らくさん上沼さんの審査に対して批判が大きいようです(個人的には、お二人のように異なった見方をされる審査員がいて良いとは思います)が、両名の得点は最終順位にほとんど影響しておらず、総合得点との相関も決して低くはありません。

点数と言うより、審査コメントの印象によって批判されているのかもしれませんね。

 

(おまけ)

個人的に、ナイツ塙さんの審査コメントが良かったです。論理的でお笑い素人の私にも評価がわかりやすかったですね。短時間で各コンビの漫才評価を言語化しており、大変感銘を受けました。

あと「スーパーマラドーナもギャロップも一生漫才やっていく仲間だと思うんですけど…」というコメントにウルッとしました。今年M-1ラストイヤーとなる お二組に対する最大の賛辞だと思います。

来年以降も是非 審査員をやって頂きたいです!!