面白い記事が目に止まりました。
「ストーリーバイアス-人は、なぜ情報に物語を求めるのか?(ZUU online)」
ストーリーバイアス:人は情報に「物語」を求める
物語には人の感情を刺激し、実行動に移させる 力があります。
太古から物語は創作され、娯楽はもちろん 様々な分野で楽しまれてきました。
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例えば「関ヶ原の戦いで西軍と東軍が戦った。小早川秀秋の裏切りがきっかけで大勢が決し、東軍がわずか半日足らずで戦を決した。」が歴史事実です。この事実に対し、数々の物語が形成されました。
小早川秀秋は石田三成に恨みを持っていた。東軍は小早川秀秋の心理を掌握していた。大谷吉継は小早川秀秋の裏切りを予見していた。等など
事実である(かもしれない)もの,完全に創作であるもの、差異はありますが、これらの物語は多くの人に受け入れられています。
なぜ人は情報に物語を求めるのでしょうか。記事では「物語にすることで安心できるから」とされています。人は因果関係を強く求める生物です。「事象に至るには、必ず原因がある」
事故,事件でも原因は強く要求され、殺人事件では動機も重要視されます。動機が理解しがたいもの、例えば無差別殺人は恐怖を感じ、「社会に与えた衝撃も大きい」として罪が重くなりますね。
人が好む物語とは
現在の技術では、大規模データ処理によって、ストーリーによってその物語が「ウケる」かどうかが判断できると言います。
2016年の論文「The emotional arcs of stories are dominated by six basic shapes」によれば、
私たちはおなじみの型に合った物語を好む傾向があり、私たちの経験と一致しない物語を拒絶する。
だそうです。結局は王道とされるストーリーが好まれるのでしょう。
映画や漫画では、これまでの常識から外れた奇をてらった作品がヒットすることは散見されます。ただ、ことTV番組のようにマス向けの作品は、やはり王道ストーリーであることが多いように思います。
古来よりストーリーの骨子は起承転結とされます。単に事実を列挙しても、脳は情報を処理できないのです。「そして、しかし、つまり、かくして」の構造が必要になってきます。
会話や漫画形式でのノウハウ本がヒットするのも、ストーリーが内在するからですね。
また創作では 登場人物の心理が一貫し、考えが常に同じであることが要求されます。
実際の人間は、一晩明かすだけでも考えが変わることなどザラです。しかし創作物には一貫性を求める傾向があります。幼少時代から老齢期に至る生涯を描いた作品でもそうですね。仮に考えが変わるとしても、これまた理由が要求されます。「なんとなく」が許されないのがストーリー世界の住人です。
そう考えると、人は他人に「キャラクター化」を要求するのでしょうか。実心理はすごく複雑であるにも関わらず、Aさんは誠実な人だ,Bさんは怖いけど根は優しい、などカテゴライズしがちです。
自分が理解できる構造に落とし込むのは、物語の要求と同じですね。
ストーリーバイアスと向き合う
同じ情報でも物語を脚色することで、対象者への請求力が異なってきます。
上司に企画提案するとき、単に「新製品は、消費欲求が少ない若者が好むデザインです」とするより、「新製品は、将来や非正規雇用が増した現代社会に漠然とした不安を抱え、消費欲求が少ない若者が好むデザインです」とした方が良いでしょう。
上司の頭の中に「若者=不安を抱える」が形成され、無意識に提示された製品に対しバイアスがかかります。
逆に消費者側の立場で見るときには、物語に気をつけなくてはいけません。ストーリーに一貫性があると、証拠がなくとも情報を信じてしまいがちです。
金融商材,保険商材で、物語によって一攫千金の夢や不安を煽られると、つい心が動いてしまいます。
うまく物語を利用していきたいですね。