言語は我々の社会基盤を形成する上で、もっとも重要なファクターとなります。
言語は単に意思,事実を伝えるだけでなく、人間関係を柔軟に調整する機能も果たすと、スティーブン・ビンカーは講演で述べています。
言語と思考
他言語を学習する上で、文法の特徴を抽出することは重要です。しかし、所謂 “例外“に悩まれることでしょう。
講演では、以下の例に触れています。
・Give a muffin to a mouse → Give mouse a muffin
・Promise anything to her → Promise her anythingのように言い換えられるが、
・Biff drove the car to Chicago は Biff drove Chicago the car
とは言えない。
文の構造は同一ではありますが、人の認知機能で考えると 両者に相違があることがわかります。
前者は、マフィン,ねずみ、約束,彼女と、対象によって文構造を変えることが可能です。
・Give a muffin to a mouse は、動作の指示
・Give mouse a muffin は、所有の変化
のように2つの意図が、含意されています。
しかし 後者の例では、運転動作の指示はできても、「シカゴがBiffを所有する」ことはあり得ません。
このように言語認知には、無意識レベルで人の構造概念が適用されます。
但し、実際にはあり得ない事象でも、比喩表現であれば適用されることもあります、
・She told a story to me → She told me a story は言い換え可能です。
Story自体が物理的に移動することはないものの、”Story”という概念が 私の頭の中に格納されたことが比喩的に表現されているのです。
このことを講演では、
「<もの>が<人>に渡るようにさせる」と 「<人>に<もの>を持たせる」 のように 起こった出来事を2通りの方法で解釈できる能力は 人間の思考の根本的な特徴であり 人が議論を行う上での基礎をなしています。
と、述べています。つまり、抽象的な概念を 具体化できるように、人類は進化しているのです。
会話の中で、文意そのままをとることを我々は行いません。比喩,ぼかした表現,人間関係を鑑み、会話の奥に隠れた感情、真意を汲み取ろうとします。
わざわざ 曖昧な伝え方をするのは、社会的関係の優位性を保つためだと述べられています。
ー 直接的な表現で伝えたとして拒絶が怖い ⇨ わざと遠回しな表現で、自分のダメージを軽減する
ー 共通理解が完了していなければ認識できない表現を使う
など、よく見られますね。このことが逆にトラブルのもとになったりもするのですが、
言語は、私達が世界を概念化し、社会を形成する上で進化させてきたツールなのです。
具体化することで、人は理解する
物事を抽象化すればするほど、一般理解からは遠のきます。
自分が理解できる構造体に概念を落とし込まないと、概念を獲得できないように我々は進化しているのです。
何かを伝えたいときには、両者をうまく活用することが大切です。
・伝えたい事象
↓
・抽象化し、概念を述べる
↓
・具体例を挙げる
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