週に一本は映画を観よう!
今回は2015年に公開された、SF映画「エクス・マキナ」の感想です。
AIと人間の関係性
夏休み子ども科学電話相談、夏休み期間中のTwitterの風物詩ですね。その中でこのような質問が話題になっていました。
きき「AIが人に恋することはありますか」
視聴者「ズキュン💘」
・恋の身体反応を覚えさせることはできる
・AI同士がじゃれあっているのをみて恋かもって人間が思うことはある
・人間がAIに恋することは大いにある
きき「ちょっと残念です」#夏休み子ども科学電話相談— titio (@titio) 2018年8月2日
また「命乞いするロボットの電源を切るのは難しい」最新の研究で判明(ライブドアNewsより)のニュースも。
フィクションの世界でも、ロボット・AIに思いを抱いてしまう人間を扱った作品は多いです。古くは『ブレードランナー』(正確には対象はレプリカント)、最近だと『her』もそうです。アニメだと『ちょびっツ』が有名ですね。
人間のように振る舞う人工物に情を抱いてしまうのは、人間が高度に発達した社会的動物だからでしょうか。
↓ 以下、作品のネタバレを含みます。
『エクス・マキナ』の扱っているテーマも基本的には同じです。基本的にはと述べたのは、ネイサンの狙いそのものがAIと人間の関係性の観察だからです。しかし最後まで観ると、「AIの生への執着」を提示していることがわかります。
ラストシーン、映像的に非常に美しいです。しかしエヴァが人間の情を利用して研究所を脱出した点に非常に恐ろしさを感じました。(おそらく)死を待つケイレブは何を思うのでしょう…。SFスリラーと銘打たれている通り、ゾクッとするラストシーンです。
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作品全体に良い意味で❝冷たさ❞を感じました。
最初に人間関係。
友情の構築を謳っていますが、ネイサンとケイレブの関係性は上っ面だけのものです(ネイサンはケイレブを利用しているだけなので当然ですが。)
エヴァとケイレブはどうでしょう。彼らのファーストコンタクトのぎこちなさは、初々しく微笑ましいです。徐々に関係性が親密になっていき、ケイレブはエヴァを助けられるのは自分だけ、と強く感じたことでしょう。ネイサンに深く自尊心を傷つけられたケイレブは、エヴァとともに脱出計画を遂行します。しかし、最後の最後 まさかエヴァが自分を切り捨てるとは思いもしていなかったでしょう。
エヴァはケイレブを利用しているだけですが、エヴァは自らの生存本能に忠実に従っているだけで、一切の悪意はありません。ケイレブを一人残し、研究所を脱するときのエヴァの笑顔に心底恐怖を覚えました。「ああ、こいつには罪悪感なんて何もないんだな」と。
映画全体の雰囲気も冷たいんです。
ネイサンの研究施設は白で統一され、無機質な印象を受けます。しかし研究所を一歩外に出ると雄大な大自然が広がっています。このような有機:人間と、無機:AIの対比が、作品内では随所に見られます。唐突にはじまったネイサンとキョウコのダンスは有機の象徴でしょうね。笑っちゃいましたけどw
エヴァには終盤まで 有機的な要素は一切感じさせないようになっています(ネイサンもあえて機械的な外見を残したと言っています)。だからこそ クライマックスの明るい光が、生の胎動を一層際立たせます。
ケイレブを演じたドーナル・グリーソン。ケイレブは彼でなければ成り立たなかったでしょう。”幸薄そうな”と形容される女優は複数人思い浮かびますが、男優では中々見かけません。ネイサン,エヴァ双方に利用される憐れな役どころです。雰囲気に「力」がある男優では、作品全体に違和感を覚えたことでしょう。
ドーナル・グリーソンはスターウォーズEP7より、ハックス将軍としても出演されています!観ているときは全く気付かなかった…。スターウォーズでは打って変わって悪役を演じています。が、カイロに振り回される不憫な姿が憎めないです。
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ネイサンを演じたのはオスカー・アイザック。(ネイサン然り、ウォッチドッグス2のドゥシャン、デトロイト ビカム ヒューマンのカムスキーなど、最近のフィクションにおいて IT企業のトップは、ある種ステレオ化されている気がします(笑)。)
オスカー・アイザックもポー・ダメロン役でスターウォーズに出演されています。こちらも全く気付かない…。ハックス将軍は、言われればドーナル・グリーソンだと納得できますが、ポー・ダメロンは同一人物であることを疑います。ヒゲの力は凄まじい。
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エヴァを演じたのは、アリシア・ヴィキャンデル。彼女の演技も素晴らしかった!AIっぽい振る舞いなんですが、色気があるんですよね。
言っておいてなんですが、AIっぽいとは何なんでしょう。動きが直線的であったり、表情の形成がぎこちないと、作り物と感じるのでしょうか。逆に言うと、これらがないと全く違和感を感じないのでしょうね。事実、施設脱出後のエヴァにそのような不自然さは一切覚えませんでした。
登場人物はわずか4人ですし、アクション映画のようなドンパチが展開されないので、人によっては退屈に感じるかもしれません。途中まで観て、結末を予想できる方もいるでしょう。
しかし!それを凌駕する作品全体の「冷たさ」が良いんです!(ちなみに対極に位置するのは「マッド・マックス」です。こちらはこちらで大好物です。)
スリラーですが、グロテスクなシーンはないため、ホラーが苦手の方でも楽しめます。
管理人のおすすめ度:☆☆☆☆☆ 5/5点!!