ノート作成法「Zettelkasten(ツェッテルカステン)」を実践する方法を検討してみます。
目次
Zettelkastenとは
参照元:
- ZETTELKASTEN METHOD (Explained Clearly with Examples and Software)
他にもルールはありますが、ここではZettelkastenを次節で示すツールを用いて実行する方法を考えますので、以下と定義します。
- 知識を1つの「カード」にまとめる
- カードは他のカードとリンクさせる
- カードは削除しない
- カード間に「構造」は構築しない
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4.の「構造」は一般に階層構造が用いられます。PC内のファイルは用途/目的別のディレクトリに保存されますね。こういった構造はZettelkastenでは要求しません。
知識は追加したときに構造が変化することがあります。知識はそもそも階層構造に適していないのかもしれません。
「リンク」を自動生成するために
Zettelkastenの独創的な点は、各カードのリンク構造です。
ですが、カード数が増えるにつれて カード間のリンク可能性は指数関数的に増加するため、人間のキャパシティの限界をあっという間に超えてしまうでしょう。
そこでサービス/ツールを用いて、自動で各カードのリンクを構築すること考えます。
思いもよらなかったカードが繋がると得もいえぬ達成感があります。カードが増えるほどセレンディピティにも期待できます。
クラウドサービスを通し、いつでもカードを追加し、情報が参照できる点も、デジタルツールの利点ですね。
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ここで紹介するサービス/ツールは以下の機能を有しており、いずれもZettelkastenを実行可能です。
- [〇〇]で括ることで、対象の単語をリンクに設定できる
- #〇〇で、ハッシュタグを設定できる(主にカードのタグ付け用)
そこで、↑のリンク機能以外のその他の特徴を整理してみます。「あえて言うなら」のスタンスで書いておりますので、ご自分で使用感を確かめてみることをオススメします。
自分の使い方に適したサービスを選びましょう!
Scrapbox
Gyazoで有名なNotaが開発した「チーム共有ノート」。チーム共有用と銘打たれていますが、個人で使用することも全く問題ありません。
個人や非営利で使う分には無料です(2020.11時点)。
ノートはオープン/プライベートに設定でき、オープンならWebサイトとしての使用も可能。
事例を調べてみると、社内Wiki、ゼミの輪読用ノート、Podcastで話した内容整理、読書ログ、ポートフォリオサイト 等々 様々な活用がされているようです。
私は、映画ログと”記事にするまでもない”メモ書き用ノートとして使用しています。
リンクを挿入する過程で、どんどん関連あるページが表示されるため、カード間の関係が編集中にわかりやすい。
カードに画像や動画リンクを挿入すると、カード一覧でサムネイル表示される点もお気に入り。
ムムムな点
Markdownとも異なった独自の記法を用いています。参考(公式ヘルプ)
慣れれば問題ないのですが、仮にサービスが終了し カードを移行する必要が生じた際には ひと手間必要となってくるでしょう。
Roam Research
Scrapboxは日本のサービスで、あまり海外ユーザーには浸透していないようです。※言語表記は英語にも対応しています。
海外だとRoam Researchが有名でしょうか。
リンクを挿入する点は独自記法([[]]で括る)ですが、それ以外はMarkdownが採用されており、仮にサービスが終了しても移行負荷が小さいです。
Notionのようにカード内の要素をブロック単位でドラッグでき、ToDoリストやカンバン表記も可能。他サービスよりノートアプリとして高機能と言えるでしょう。
ムムムな点
無料トライアル期間はあるものの、基本的に全プラン有料(2020.11時点)。
Official @RoamResearch pricing.
Very close to opening the waitlist for those ready to put down a card.
Everyone already in the beta will have at least a month more of free usage – but will need to upgrade if you want multiple graphs/workspaces or to try out offline-only mode. pic.twitter.com/fkS6yjYYbh
— Conor White-Sullivan (@Conaw) June 8, 2020
Obsidian
Obsidian(黒曜石)の名の通り、武骨なノートアプリです。
使用感はRoam Researchとほぼ同じ。Roamデータのインポートも備えており、Roamからの移行先として人気。
最大の特徴はオフラインサービス(デスクトップアプリ)。
動作はサクサクである一方、ファイルはローカルに保存されるため、他端末との共有には、対象ディレクトリをDropboxやGoogleドライブの共有対象にする等のひと工夫が必要。
またAndroid,iOSアプリはないためスマホで閲覧/編集するためには、上記のように共有対象にした上で、Markdown編集アプリを介する必要があります。注:Scrapbox、Roamもアプリ版はありません(2020.11時点)。
個人で使用する分には無料。
参考:「Roam ResearchとObsidianの方向性の違い」(note)
「リンク」を自動生成する弊害
「リンク」を自動で構築するサービス/ツール群を見てきましたが、これらの弊害も考察します。
オリジナルのZettelkastenには「アウトラインカードを追加する」工程があります。アウトラインカードを作る過程は、カード間のリンク構造を自身で把握することそのもの。
自動でリンクが構築される点は非常に便利ですが、単に カード間に繋がりを見出すことに満足してしまうだけでは意味がありません、
”自動の便利さ”に甘えるだけでなく、Zettelkastenの肝である「リンク」を常に意識することが大切ですね。
おまけ①:結局 何を使っているの
私は、ScrapboxとObsidianを併用しています。
- Scrapbox: ”記事にするまでもない”メモ書き用ノート
- Obsidian: ”学習した内容”の整理ノート
という使い分け。
「”学習した内容”の整理ノート」は将来的にも残しておきたいため、頑強性が高い(=Markdown記法のため他サービスにも容易に移行可能な)Obsidianを採用。
デスクトップアプリという欠点も、学習記録は基本的に腰を据えてのタイミングでしか参照することがないため不便はしていません。
おまけ②:『思考の整理学』
Zettelkastenを学ぶ上で、外山滋比古 先生『思考の整理学』で述べられていた、カード・ノート法を連想せずにはいられませんでした。
カード・ノート法では、各カードは見出しで管理する手法がとられており、これが「リンク」に相当するのかな。