週に一本は映画を観よう!
今回は日本では2017年に公開されたアルゼンチン・スペイン映画、「エンド・オブ・トンネル」の感想です。
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※管理人が鑑賞したときは無料で公開されていましたが、無料対象は定期的に入れ替わるため注意してください
破綻はあるが、終始ハラハラドキドキ
孤独の男が魅せる!!!
事故で家族を失い 車椅子で生活している主人公ホアキンが、銀行強盗計画を乗っ取る、と かなり引き込まれる予告内容。
脱獄モノのようなハラハラ感と、ハイスペック主人公の頼れるオヤジを堪能できる痛快エンターテイメントです。ツッコミどころはあるものの、テンポがよく 120分という上映時間を感じさせませんでした。
↓ 以下、作品のネタバレを含みます。
主人公ホアキンが、良い意味で狂っており、躊躇のなさが良いですね。『96時間』の主人公ブライアンのように、プロフェッショナル技術と醸し出る哀愁を感じさせます。さすがに、あちらのようにバッタバッタと敵をなぎ倒すことはありませんが、笑
物語の構造は、ホアキンが ストリッパーの母ベルタと失語症の娘ベティに心を融かされ、彼女たちのために奮闘するというもの。
銀行強盗計画を 証拠映像とともに警察に通報すれば、すぐに計画を潰せるものの、彼女たちのために奪った金を横取りするという中々ぶっ飛んだ思考をしています。
家族を失ったことで 心が壊れかけているのでしょうか。脚を手術しなかったり、庭に事故車を放置、愛犬カシミールを安楽死させる手はずを整えたりと、人生への絶望と諦めを感じます。
ベルタは、銀行強盗用のトンネル堀りがバレないように 隣家のホアキンを監視するために送られてきたスパイ。母娘を わざわざ監視用に送ったりするか?とも思えますが、ベルタが気づいているように、最初からホアキンの孤独を利用し、何なら惚れさせようという策略だったのでしょう。
さて、やはり母は強し というわけで、ベティの身を案じベルタはガレリトら銀行強盗を裏切ります。
ホアキンはいまいちベルタを信頼しきっていないようで、ベッドに拘束し、筋弛緩剤(?)を注射する周到ぶり。ラストシーン、これから3人で過ごしていくことが示唆されているもの、ここまでしておいて 仲睦まじくやっていけるのか ちょっと心配、笑
ガレリトの計画破綻はひとえにベルタの裏切りを見越せなかったこと。歴戦の銀行強盗で、仲間を残酷に処刑するなど 冷酷無比なリーダーではあるものの、やはり惚れた弱みでしょうか。
ヒスパニック系の悪人は、家族には甘いが 粛清は徹底的にやるイメージです。『ミニミニ大作戦』,『トレーニングデイ』などでも描写されています。
ストーリー上は 間抜けな役回りとなるガレリトですが、ヘマをした仲間に迫るシーンをはじめ 非常に凄みがあります。これから拷問されるとわかっていながらも 決して反撃できない重圧ですね。。
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話の展開を見返してみると、奇跡に奇跡が重なった綱渡りで物語が進行していきます。
普段作業のない昼間にトンネルを下見中に、ガレリトらがトンネル内にやってくるものの、かろうじて難を逃れる。ベティが腕時計を拾ってくる。銀行強盗だと告げる前に、ベルタも一味だと判明する。ベルタを裏切らせる決定的な情報を偶然得る などなど、挙げればキリがありません。
都合が良すぎるとも感じさせますが、この構成が 物語のテンポを生み出しています。
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ホアキンが車椅子であることは、物語にどう作用したのでしょう。
主人公最大の特徴にもかかわらず、「車椅子でなくてもストーリーは成立する」ようにも思えます。
しかし 車椅子で下半身が動かないからこそ、 ベルタの哀れみを買うのに一役買い、また 捕まったら戦闘では太刀打ちできない緊張感を生み出しています。※映画キャッチコピー「最大の武器は、動かないか下半身」は 誇大広告気味ですが 笑
ところでホアキンは一体何物なんでしょう。エンジニア? 筋弛緩剤を扱っていることから医者? かなりハイスペックですよね。
こういった ある種のスペシャリストが、 世を忍ぶように暗澹たる生活をしているプロットは古くから人気のあるジャンルです。ホアキン役のレオナルド・スバラグリアの表情演技,雰囲気も素晴らしかったですね。
撒かれた伏線を回収していくプロット,緊張の連続で終始ハラハラドキドキで、120分が中弛みなく あっという間に終わってしまいます。
少し登場人物の心情が理解できない点と、都合が “良すぎる”ストーリー展開ではあるものの、渋オヤジを十分に堪能できる 痛快モノです!!!
計画はいつだって運と女で決まるのさ。
至言ですね。