2017年に上野の森美術館で催された「怖い絵」展。大変な盛況だったようです。私も見に行きましたが、ディズニーランドもびっくりの2時間待ちでした(笑)。
展示されていた作品は、情景そのものが怖いものはもちろんですが、より恐怖を感じたのは、所謂「意味がわかると怖い」系でしたね。
イコロジー(図像解釈学)
恥ずかしながら、イコロジーという言葉は本書で初めて知りました。
『記号創発ロボティクス 知能のメカニズム入門』では、知能を方法論的にシステム化して研究されていました。同じように「何故感動するか」の理論立てて解釈することも、芸術の醍醐味ではないかと思います。
ある作品の素晴らしさを伝える際、「心に訴えてくるものがあった」より、「この作品の時代背景では〇〇だった。配色は人物の心情を示しており、△△の擬人化である」と説明されたほうが興味を惹かれるのは私だけでしょうか。
言語の翻訳作業は、単語・文法はもちろんのこと、その言語の文化的背景を知らなければ不可能と言われます。イコロジーも同じで、時代的背景,価値観を理解した上ではじめて為される学問です。著者 若桑氏の豊富なバックグラウンドにただただ舌を巻きます。
その上で思考や感情を解釈することが必要です。抽象的なパートを多く含むため作者の心情を完全にトレースすることは難しいでしょう。解釈が一義的でないことにも納得できます。
作品の詳細を追っていく過程は、ミステリーの犯人探しのようでした。絵画は観るだけではなく、読むものでもありますね。