悪の道は茨の道なのか『「世界征服」は可能か?』

 

「世界征服」は悪の組織の常套文句です。しかし、それが具体的に何を指すのかは組織によって大きく異なるようです。

本書では種々の目的に応じた世界征服の実現に向けて、手順をわかりやすく示してくれています。それでは誰もが一度は願った悪の夢に向かって突き進みましょう!

世界征服の野望

好きな料理をお腹いっぱいに食べられ、自由に遊べて、自分に意見するものは誰もいない…なんて素晴らしいのでしょう。私はどうやら世界征服後の世界をきちんとイメージできているようです。

一口に世界征服と言っても目的は様々なようで、私のようにお金を求める者もいれば、はたまた人類根絶を目指す過激派も存在します。どういった目的であれ、野望を成し遂げる資金と仲間を得るためには、確固とした目的とバイタリティーが必要不可欠です。


ただ本書で述べられている通り、お金を求めるのであれば、何も世界征服に固執する必要はありません。

「世界征服して、贅沢な暮らしをしたい」と考えている場合。もし途中で経済的に成功してしまったらどうするのか?世界征服は「金のかかる夢」と割り切って、単なる金持ちになるのか。それとも貧乏覚悟で男の夢を選ぶのか。

ー本文より引用

また、自分が望む世界を手に入れる「支配者」たりえるには、並々ならぬ能力が要求されそうです。目的と計画の立案、資金調達と設備投資、人材確保と組織統制。これらがそれこそ世界レベルの能力であってこそ、支配者になり得るのです。


何やら雲行きが怪しくなってきました。自分の「世界征服の目的」と「支配者としての能力」に自信がなくなってきました。正直お金が手に入れば、世界征服に拘りません。宝くじでも良いのです。さらに、自分が楽をしたいのに人並み以上の才覚と努力が必要だとは…

私はどうやら世界征服には向いていないようです。しかし世の中には、とんでもないカリスマ性と才覚を併せ持つ超人が確かに存在します。彼らに夢を託しましょう。悪の夢を!

世界征服は可能か?

本書は終章でこう問いかけます。そもそも「支配」とは何か?と。物質的な豊かさを手に入れた現代では、「特権階級」というのは存在し得ないと述べられています。どんなに高級な車を乗り回しても、大豪邸に住んだとしても、それらは究極的にはお金で誰もが手に入れられるモノでしかないのです。

「悪の組織による世界征服」が究極的には何になるのか?最後にこの疑問に回答することで本書はまとめられています。是非内容を確認してみてください。

まとめ

著者の豊富なサブカルチャーの知識によって、世界征服の目的と支配者像をタイプごとに具体例を挙げながら示されており、ニヤッとする記述が満載です。また著者特有の風味を効かせた小気味の良い文書で非常に読みやすいです。ユーモアエッセイ風でありながら、ハッと自分の立ち位置についても再認識させられる啓蒙書でもあります。

タイトルだけでこの本は大成功してると言えるでしょう(笑)