快楽を科学する『脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体』

 

本書『脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体』は、快楽が決して抗えない感覚であること思い知らせてくれます。

私達は理性的な判断ができる人間です。だからこそ、本能をも凌駕する快楽物質とうまく付き合っていきたいですね。

オピオイド

快楽とともに苦痛も私たちには欠かせない感覚です。無痛症患者の方は、人体に重篤な危機が迫っても気付かずに亡くなってしまうこともあります。

しかし苦痛は耐え難いもの。そんな苦痛を和らげるのが「オピオイド」です。

オピオイドは単体の物質名ではなく、「ケシから採取されるアルカロイドや、それから合成された化合物、また体内に存在する内因性の化合物(Wikipediaより)」を指します。

代表的なのがモルヒネ。アヘンから精製されるモルヒネは、戦場でのケガや末期ガン患者の鎮痛に役立ってきましたが、強力な依存症があることが知られています。

ランナーズハイも同様にオピオイドの作用によるものです。限界に近い運動の苦痛を和らげるため、脳内からβ-エンドルフィンが分泌されるそうです。これにより、ランニング依存症と呼ばれる中毒状態になる方もいます。(Wikipediaランナーズハイによると、「ランナーズハイをもたらせる物質はβエンドルフィンではなく、体内で生成される脳内麻薬の一種である内在性カンナビノイドに属する化学物質であるとする説が提示された」ともあります。まだ完全には解明されていないようです。)

こう聞くと、ランナーズハイが急に病的なものに感じてしまいますね。運動は大切な習慣ですが、何事にも適度があるようです。

このように習慣づけに快楽物質は作用します。何かを継続しないと気持ち悪く感じる感覚。苦痛に対し報酬が与えられることで、繰り返しの行動が継続できるのです。

始めるまでがもっとも大変で、ある程度習慣化すると 快楽物質の助けによって、継続が容易になります。人体をうまく騙すことで習慣を定着させましょう。

依存症

管理人は現在ダイエット中です。身につまされる内容が目に止まりました。

必死に食事制限をし運動を行っても、中々体重は減少しません。これは脳が体重を安定化させるようコントロールしているというのです。何とおせっかいな機能なんでしょう(笑)!もちろん体重減少という人体の危機的状況に抗うために、進化の過程で身につけた能力なんですが。

脂肪の量が減少すると、脳が満腹感を感じるラインを上げるそうです。これによって、タイエット前より体重がリバウンドをすることもあります。急激な食事制限は却って良くないのでしょう。

また痩せなければいけないという、極度なストレスによって脳の報酬系に異常をきたすと、食事量が増えたり(過食)、まったく食事を受け付けなくなることもあります(摂食障害)。


セックス,恋愛にも依存症が存在します。脳の作用によるにもかかわらず、モラル欠如として扱われるのが辛いところです。

セックスと恋愛の相違点は持続性。お互いへの感情の昂ぶりは、1~2年しかもたないそうです。新婚夫婦も時間が経てば、落ち着いた関係になるのは当然ですね。新たに恋愛感情を求めて浮気をしてしまうことも。

人間関係への依存は他にもあります。

相手からの感謝に依存している「利他的依存」。誰にでも良い顔をする八方美人が予備軍かもしれません。極端な例になると、怪しい商材をなんの躊躇もなく購入してしまう いい鴨です。

お世話することに執着する「世話型依存」。子どもやパートナーを世話することに執着します。ヒモ男を世話するパートナーなんて典型ですね。ヒモ男も相手の執着に依存している、共依存関係でもあります。


ゲーム依存。…耳が痛いですね。

クリアする快感。レアアイテムを手に入れたことの達成感。他プレイヤーからの称賛。「脳汁」とも形容される快楽物質が分泌され、全てが依存に繋がります。


リスクに依存。

ギャンブル依存やスピード狂がこれにあたります。確実に手に入れられる報酬より、リスクによる刺激を伴った報奨を求めてしまいます。徐々に耐性ができてくることも恐ろしい点で、よりハイリスクを追求しがちです。

生物の進化の過程で、リスクを伴った報酬に対する幸福感はどのように獲得されたのでしょう?

しかし、リスクに対する耐性は株式投資,FXには必要な要素かもしれません。少しの勝ち負けを気にしてしまと、仕事も手につかず株価情報を追ってしまいます。ずっと見ていても、株価が自分の都合の良いように好転することがないとわかっていても、気になってしょうがないのです。自分の感情をコントロールすることがもっとも重要です。もちろんリスク管理は徹底しましょうね。

社会的報酬

年収と幸福感は相関しないことはよく知られています。幸福感は他者との比較でしか得られないものです。自分の年収の絶対値より、周囲の人より上か下かで幸福感を感じます。

こちらの記事でも触れているように、金銭がやりがいに直結するわけではありません。

金銭的報酬は単純作業には効果的ですが、答えのない課題を解決するためには、むしろ感謝や評価といった社会的報酬の方が寄与度が高いという研究結果もあります。

自分が社会に対してどういう役割を果たすか、またどう評価されるか。これらが社会的報酬です。

社会的報酬は、個体として生き延びることだけに快感を覚えるよりも、主として生き延びることを優先した生物の、生きるための知恵だったのです。

ー本文より引用

人間は高度に発達した社会的動物だからこそ、周囲の人との関係性が重要なのですね。

他人との関係性によって博愛主義に目覚める、優越感を見出すために勉強やスポーツを精一杯頑張る。これらは良い方向に働いた例です。

逆に他人を貶めたり、相手を支配することは現代の価値観では推奨されません。

このように社会的関連性には功罪があり、うまくコントロールすることが大切です。

まとめ

快楽は、理性では決して抗えない感覚です。習慣化の定着のように うまく付き合っていきたいですね。

成功体験も快楽作用の一種です。何事にも自信,やりがいを感じられないときは、小さなことから成功体験を積み重ねていくことが大切です。

薬物依存が快楽物質によってもたらされることを知っていれば、自らの意思で止めることは難しいと容易に判断がつきます。理性的な判断能力がある内に、決して手を出さないようにしましょう。お酒,タバコもほどほどに!