2009年に発刊された『サラリーマンのためのお金サバイバル術 家・車・保険』を再読しました。
2009年から約10年で私達を取り巻く環境は大きく変わりました。政権交代,3.11,スマホの普及,キャッシュレス社会の到来,…etc
もし2009年と現代の環境で、同時に適用できる方法があれば、本質を突いた公理足り得るかもしれません。
人並みの構造
高度経済成長の中、「人並み」というモデル化された人生がマスメディアを通して国民の共通認識となりました。一億総中流社会ですね。
学校を出て、就職し、結婚、子育て、マイカーとマイホーム、終身雇用…。
本書ではそういった人並みを「あちら側」と呼称しています。選民感が出て鼻につく方も居るようですが、本書のスタイルとして良い意味で「煽った」書き方だと思います。
さて「人並み」の構造は、この10年で大分様変わりしたように思います。
世代間のギャップを許容し、個々の多様性を重要視する風潮になってきています。その背景には スマホの普及があるでしょう。
以前はマスメディアを通じてモデル化された人生しか世に出ていませんでした。しかし、あらゆる個人が情報を発信できる側にまわったために、多様性を受信できるようになりました。
普通の人生を謳歌することが、人生の目標でなくなったのです。
2009年は まだまだ「人並み」が幅を効かせていました。そんな中「人並み」に疑問を呈した本書の先見の明は素晴らしいです。
お金の運用
賃貸 vs 持家
昔から議論されてきたこのテーマ。本書でも取り上げられています。
人口減少のため賃貸価格は安くなる、賃貸のほうが得だ。
いやいや人口減少で、却って維持率が難しくなるから結局賃貸価格は上がる。
テレワークが今後の潮流なので、田舎に持ち家を買うのが良い。
様々な意見があるでしょう。当人の置かれた環境で変動するので、そもそも絶対の解はありません。
本書では「不動産の値上がりが期待できるか」で賃貸と持家を比較したところ、今後 持家にメリットはないという立場です。しかし、子育てなどのライフスタイルによって必要な空間は異なるため、一概に言えないともされています。
私も同じ立場です。
都市部では不動産価値は上がり続けるかも知れませんし、少し郊外に出るとほとんど価値がなくなるかもしれません。
上で例示したようにテレワークが本格的に普及し、自動運転で物流・通勤形態が変わり、郊外に住んでも都市部と遜色ない生活が可能になるかもしれません。単に不動産の値上がりだけでの比較は難しい、と個人的には考えます。
保険
本書は、生命保険をはじめ 各種保険はばっさりと不要の立場です。「保険に回すより、しっかりと貯蓄をした方が良い。」
これまた個々の環境に依存する問題なので難しいですね。独身なら生命保険は不要とは言えますが、家族持ちとなると迷ってしまいます。
以前紹介した「おかねアンサー」などを見て、自分と似た状況を参考にすると良いのかも知れません。
とりあえず入っておこう、と漫然と考えるのではなく、「万が一のときに資産から賄えるか」を基準に じっくりと考慮する必要があるでしょう。
投資
NISA制度などで、投資が奨励されています。投資するなら、アクテイブ運用とインデックスファンドなどのパッシブ運用、どちらが良いでしょうか。
『ウォール街のランダムウォーカー』や『敗者のゲーム』ではインデックス投資こそが最良とされています。
プロの運用でもインデックス投資に及ばないと、本中で繰り返し述べられます。
世界市場がこのまま継続するなら、この先も真でしょう。
しかし全員がインデックス投資をすると意味がありません。誰かがアクテイブ運用し、市場に歪みが生じることで恩恵を預かれるのがパッシブ運用です。
私個人はインデックス投資を基本とし、余剰予算でアクテイブ運用しています。インデックス投資は正直退屈で、アクテイブ運用が絶好調の時は資金を回したくなります。しかし自分の決めたポートフォリオを遵守することこそが最良と信じています。
また将来、国家が発行する貨幣に価値がなくなる可能性もがないとも言えません。ですので 何か一本に集中するより、あらゆることに手を出して試してみることが大切だと考えます(もちろんリスク管理をしっかりとした上で、ですね)。
まとめ
かなり極端な例(自分で家を一部を建てる など)も挙げられていますが、本書の内容は現在と同じ感覚で実行できる方法ばかりです。
10年経っても、市場環境は基本的に変わっていないということでしょうか。
一方 人生の価値観は大きく変容したように思います。本書で「あちら側」と読んでいる多くの人々の人生観が、共通の目標でなくなってきています。
次の10年はどう変化するのでしょう。未来を予測することは難しいです。ですので、自分の価値観が絶対だと過信せず、常に自身をアップデートできるようにしたいものです。